「おじいちゃんやおばあちゃんのお世話が必要になったら、どうするの?」。子どもからそんなふうに聞かれたら、暮らしのこととお金のことを、どこまで答えられるでしょうか。教育費を準備しているご家庭では、親の介護まで考えると、何から手をつけるか迷うかもしれません。
わたしは、介護費用の平均をそのまま貯蓄目標にする前に、「最初に払う分」と「毎月足りなくなる分」を分けて考えたいと思っています。ご家族のみなさんも、まずは費用の形から一緒に見ていきませんか。
生活費と一緒にしたお金が、見えにくくなった経験から
わたしには、児童手当の振込口座を生活費と一緒にして、使い込みかけた失敗があります。口座に残高があることと、将来のために残せていることは、同じではないのですね。
この経験から、介護の備えを考えるときも、貯蓄の総額だけで判断しないようにしたいと思います。教育費に使う予定のお金まで介護用に数えてしまうと、同じお金に二つの役割を持たせることになるからです。
まず紙に「教育費」「自分たちの老後」「親の介護」と書き、今の貯蓄をどの目的に充てるつもりか整理する。口座を増やすかどうかより先に、お金の行き先を決めるところから始められそうです。
親の暮らしを考える前に、最初と毎月の費用を分ける
生命保険文化センターの2024年度調査では、介護の一時的な費用は平均47.2万円、月々の費用は平均9.0万円です。在宅と施設では、月額の平均にも違いがあります。
| 項目 | 平均 | 家族で考えたいこと |
|---|---|---|
| 一時的な費用 | 47.2万円 | 住宅改造や介護用ベッド購入など、開始時の支出 |
| 月々の費用・全体 | 9.0万円 | 継続して払うお金 |
| 月々の費用・在宅 | 5.3万円 | 自宅で暮らす場合の目安 |
| 月々の費用・施設 | 13.8万円 | 施設で暮らす場合の目安 |
| 介護期間 | 55.0カ月(4年7カ月) | 長く続く場合も含めた準備 |
この数字は、過去3年に介護経験がある人の回答に基づく平均です。在宅と施設の月額は全体平均の内訳なので、三つを足し合わせるものではありません。また、平均額は、そのまま子ども世代が負担する金額でもありません。
介護期間が4年を超えた人は約4割でした。平均の4年7カ月で終わると決めず、月々の負担をどこまで続けられるかも考えておきたいですね。
「保険があるから大丈夫」と決める前に、支払う項目を見る
厚生労働省の介護サービス情報公表システムによると、介護保険サービスの利用者負担は原則1割で、一定以上の所得がある65歳以上の方は2割または3割です。施設では、別途、居住費・食費・日常生活費も必要になります。
ここで分けたいのは、「介護保険サービスに対する負担割合」と「家族が実際に払う費用全体」です。施設から費用の説明を受けるときは、サービスの自己負担、住まい、食事、そのほかの生活費を項目ごとに書き出すと、月額を比較しやすくなります。
調査の月額平均に、さらに1割を掛けて予算を作るわけではありません。平均は暮らし方を考える入り口として使い、具体的な予算は利用するサービスや施設の金額で置き換えていく、とわたしは考えています。
今の準備は、親のお金と家族の不足分を書き出すところから
わが家では、月1回、夫婦で「お金会議」をしています。介護の備えも、このような家計を話す時間に一項目加える形なら、考え始めやすそうです。開始年齢を一つに決めるより、今できる確認と、金額が見えてからの積み立てを分けてみます。
- 親が話せる範囲で、希望する暮らし方と、介護に充てられる年金・預貯金を確認します。
- 親自身の生活に必要なお金を残し、介護費用に回せる月額を書きます。
- 想定する介護費用から親が出せる分を引き、家族が補う不足分を計算します。
- 一時費用と毎月の不足分を別々に記入し、自分たちの家計で出せる範囲と照らし合わせます。
ここからは、準備額を考えるための仮の例です。一時費用の準備目標を50万円、準備期間を5年と置くと、必要な積立額は月約8,333円です。また、介護が始まった後の不足分を月3万円と見積もるなら、1年分は360,000円になります。
50万円も月3万円も調査の平均ではなく、家計に当てはめるために置いた金額です。「開始前に貯めるお金」と「始まってから補うお金」を分けることで、今の積立額と将来の負担を混同せずに考えられます。
次の家族の話し合いでは、一つだけ数字を置いてみる
一度の話し合いで、すべて決めなくてもよいと思います。まずは一時費用として確保できる額を書き、次に月々いくらなら補えるかを話す。親の希望や費用の見通しが変わったときに、数字を入れ直せる形にしておきたいですね。
教育費との重なりが気になる場合は、幼稚園から大学までの教育費を時期別に整理する記事も参考に、支出が増える時期を並べてみてください。介護用に回せる額を考えるときの手がかりになります。
ご家族のみなさんが次に話せそうなのは、親の暮らしの希望でしょうか。それとも、毎月の家計から準備に回せる金額でしょうか。